第二十話 私たちの未来について

 江別製粉70年の歩みのなかで、幾度となく試みてきた技術と品質への大きな挑戦。私たちにできることは何なのか。北海道の製粉会社として本当に大切なことは何なのか。食の世界が多種多様化していくなかで、小麦と粉に向き合い、一次産業と三次産業とを結ぶ私たちの役割を、反芻しながら今に至っています。そしてたどり着いたのが、マキシマムからミニマムへの変換。その集大成として我が社独自の小型製粉プラントF-shipが誕生したと言えるでしょう。生産者単位の、品種単位の、オリジナルブレンドの、小ロットでの製粉を、品質を落とさずに可能にする。それこそが長年かけて追い求めてきた我が社の答えの一つです。「地産地消」という言葉を聞くようになって久しい昨今、時代のムーブメントとは掛け離れた地道な歩みではあっても、元来、日本人が大事にしてきた空と大地と水と自然、そして人々との関係を丁寧につむぐ企業でありたい。   

 このエッセイでは、江別製粉創業への道のりを、北海道開拓の時代から近年に至るまでの歴史物語として、20回に亘ってお伝えしてきました。そこには、激動の時代に生きた祖先たちの姿と、江戸末期に始まり、明治・大正・昭和・平成と大きく変化を繰り返す日本の背景も垣間見ることができます。私たちは何を目指し、何を求め、何に意義を感じて生きていくのでしょうか。仕事の流儀とは、その人の生き方そのもののような気がします。今この瞬間に何を選択するかによって、その先の未来が大きく変わる。それは会社という単位になっても同じことだと思うのです。

 江別製粉の始祖となる安孫子助右ヱ門が、近江商人たちに習い胸に刻んだ、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」。自分の懐だけではなく、買い手も潤い、世の人々のためになる商売こそが、末永く価値ある商いだとする教えです。人も企業も社会も、大自然の営みの一部である限り、「経済」という金融至上的な志向に偏っては、結局のところ本来の豊かさを失ってしまう。今、世界の先進国では、産業と経済を循環型の制度へと国策をシフトする傾向にあるようです。どんなに小さなことでも、社会のバランスを考え選択する時代が来たと言えるでしょう。たとえ、小さな日本の小さな製粉会社であったとしても、大切なことを見失わず、次なる100年を目指し歴史を重ねて行こうと思っています。どうかこれからも、私たちの未来への歩みにご期待ください。