ハルユタカよ、永遠に…

皆さん、こんにちは

粉屋の安孫子です

 

平成28年2月19日。立春を過ぎたとは言え、まだまだ寒い北海道。初冬蒔きの小麦たちが、畑のなかで本格的な春を待つころ。ハルユタカ誕生30周年を祝う祝賀会を、発起人一同の手によって開催しました。多くの品種が作られ改良が重ねられるなか、同一品種が長く大切にされ、30年を越える今も、現役で栽培・収穫されるなど、滅多にあることではありません。

 

私たちに夢と希望と未来を与えてくれたハルユタカの誕生を祝う席に、たくさんの関係者が集いました。そこにいる人々は、みんなハルユタカが引き寄せた小麦の輪でつながる皆さんです。育種に関わった方々や、ハルユタカの存在を広めるために大奮闘したパン屋さん、ともに試行錯誤を繰り返した四銃士、焼き菓子コンクールを牽引した仲間らが満面の笑顔で並んでいます。その中央には、ハルユタカで作ったパンや料理、スイーツの数々が彩りを添えています。

感無量…。

 

小麦と粉の専門家を自負していた私たちに、新しい扉を開いてくれたハルユタカ。育種家や粉屋、メーカーの手を離れ、自宅でパンを焼く主婦たちのもとへ、気づけば自らテクテク歩いていったハルユタカ。雨風に弱く、決して丈夫な小麦ではないけれど、粉になると驚異の強さを見せたハルユタカ。ハラハラしたり、ドキドキしたり、ワクワクしたり。ハルユタカを通じて出会った人々と、共にした貴重な時間が胸に蘇ります。

皆さんも思い描いてみてください。雪の残る畑で、寒風にさらされながら芽吹いていた小さな緑が、瞬く間に青々とした青年小麦に育ち、北の大地を一面の黄金の海へと染めていくのです。土と水と空と風と、すべてを味方につけ成長するその健気さと力強さ。それこそが「生きる」原点ではないでしょうか?

 

私は思うのです。人がそれぞれの人生を歩むとき、未知なるものに胸をときめかせ、新たな何かに臨む覚悟と、わずかな疑問にも挑む勇気、そういったものが必要になるときがある。たとえ小さなきっかけであっても、心に映るわずかなサインも見逃さずにいれば、必ず新しい道を拓くことができるのです。ハルユタカという小麦は、その新しい道を私たちに教え、一緒に歩んでくれたのだと思います。

 

ハルユタカよ、永遠なれ

 

智恵と勇気と可能性を与えてくれた北の小麦ハルユタカくん。人生の善き友であるキミへの感謝として、このエッセイを贈ります。