食生活の変化と小麦の価値

皆さん、こんにちは

粉屋の安孫子です。

 

 

国産小麦に対する小さな意識改革は、さざ波のように広がっていきました。この頃になると、家庭においても需要の幅が変わっていきました。パスタやピザ、焼き菓子や菓子パンなど、バリエーションも豊かにお母さんの手作りメニューが食卓を飾るようになったのです。そうなれば、自ずと小麦の使用頻度も高くなります。

 

「マカロニとスパゲティ」だけの単純な世界が、ペンネやラビオリといったショートパスタやラザニア、じゃがいもと小麦粉を使ったニョッキなど、メニューも形状も異なる世界へと大きく広がっていきました。スパゲティに求められるアルデンテ。でも、それとは違うパスタの世界があるということを、消費者が知っていくわけです。大量に小麦を扱う人々にしてみると、どこかの片隅で起きていることぐらいにしか見えなかったかもしれません。でも、確実にその需要は伸びていったのです。

 

また、それを後押しするかのように、国産にこだわった品ぞろえをする小規模スーパーや店が増え、同時に、消費者の意識も安全性、味、品質といったものを大事にする傾向に変化します。余計なものは「混ぜない、加えない」という風潮とともに、単一品種に注目した商品がつくられるようになっていきました。この頃には、北海道産の小麦を軽く扱われたり、おいしくないとレッテルを貼られることもなくなっていました。

ここでハルユタカのことに話を戻すとすれば、この小麦ほどセンセーショナルな存在はないということです。改良された後発の小麦はたくさん誕生しますが、これほど刺激的な小麦は出てこなかったように思います。ハルユタカに取り組んで約30年になりますが、この小麦がダメなら途中で終わっている話です。けれど、今も根強く残っている。これほど長く大事にされる小麦は類を見ません。だいたいが改良を重ねて違う品種へと生まれ変わっていくからです。これは、文字通りハルユタカの豊かな個性が成しえることではないでしょうか。そして一部の生産者による、収益性を度外視した気概があったからではないでしょうか。

 

一粒の小麦を植えてから、消費者の口へ届くまで。トレサビリティの本質を間近に見た者として、ハルユタカの役割の大きさを改めて感じずにはいられません。