皆さん、こんにちは
粉屋の安孫子です。
地域を挙げてチャレンジした、焼き菓子コンクール。この挑戦によって、とても大きな収穫を得たと思っています。プロによる評価は信頼を生み、その先の商品化と消費が望めるからです。今まで価値を認めてもらえなかった道産小麦でしたが、タンパク質が少なく、おとなしいチホクはお菓子。コシの強いハルユタカはパンという新しい道が見えました。当初、麺用に栽培されてきた品種も、既成概念にとらわれずにトライしたことで、新しい世界が拓けたのです。これは単に道産小麦が菓子やパンに適しているという評価だけではなく、「お菓子はアメリカ小麦がいい」という常識を打ち破る快挙でもありました。
実は、これには裏話があったのです。アメリカ産小麦の品質にバラツキがあった年のこと。国内最大手の製粉会社が青森産の小麦を買い求めていたことがわかり、それがもう一つのヒントとなっていたのです。輸入小麦とは異なる形で、国産小麦の時代が来る。そんな兆しを感じる出来事でした。
私たちの小麦には力がある。ハルユタカに限らず、道産の小麦に対する情熱がコンクール開催のエネルギーとなり、小麦に関わるタテの業種が民間主導で1本につながったこと。それはハルユタカたち小麦がもたらした財産です。単独で優れた結果を出す人物もいらっしゃいますが、複数の人が心を寄せ合い、結果を生み出すしくみは、とても尊く価値があるように思うのです。商売上の利益と関係のない絆。みんな道楽のような気持ちで動いていながらも、確かな使命感がそこにはあったと言えるでしょう。
僕らの小麦が、僕らを導いてくれる。
ハルユタカの成功と活躍を背景に、後継の小麦たちが次々と誕生しました。きたほなみ、キタノカオリ、ゆめちから、春よ恋、はるきらり…。続々と登場する粉を工夫しながら使う。これが業界の意識を変え、道産小麦の幅を広げてくれました。使い方を限定することなく、個性を柔軟に活かした新しい考え方。ブレンドによって更なる良さや用途も見えてきました。着眼点が広がって、多方面においても取り組む姿勢が生まれてきたのです。これこそが、一粒の小麦が与えてくれた知恵と勇気。決して大きな消費層ではありませんが、小麦たちに後押しされながら、着実に意識の変化が訪れていたのです。