粉屋、畑を歩く3

皆さん、こんにちは

粉屋の安孫子です。

 

ハルユタカを追いかけ、とうとう畑に飛び出した私たち。小麦農家の協力で、雪のあるうちからハウスを建ててハルユタカの苗を育て、春には苗植えするという挑戦を始めました。ポットには弁当肥えといって、中に肥料を入れた状態で種を蒔きます。ハウスに守られた種は、強い風やみぞれまじりの雪に晒されることなく、スクスクと育ちました。

 

で…これをどうやって植えるんだ?

 

やはりビートとはワケが違います。髙木さんは日本甜菜製糖に勤め、ペーパーポットによる苗植えの先駆者として、これまで活躍していた人物です。大抵の農業機械のことは知っています。すでに移植機は存在していたものの、既存の機械では私たちのポット苗をうまく畑に植えることができません。どうにかして小麦用の移植機は作れないものか、粉屋が機械づくりにチャレンジすることになりました。そこで、とある農家さんの庭先に捨ててあった立派な田植機を貰いうけ、手作りで小麦移植機へと改良することにしたのです。私も、父・従兄弟と続く機械好き。大学でも工学を専攻してきたものですから、ものづくりの原点に心躍ります。

工夫を重ねた小麦の移植機。けれど何度やっても、なかなかうまく苗植えができません。ポットの紙が破れず、苗を畑に植えるどころか機械のなかで根詰まりしてしまうのです。せっかく育てた苗が無駄になるなど、残念でなりません。これには江別製粉の四銃士も畑に繰り出し、苗植えのテスト・テストに明け暮れました。スーツを着たおじさん4人が、畑の中を行ったり来たり。ハルユタカの成長を見守ること4年。ついには春蒔きや苗植えに代わる、初冬蒔きが登場し、ハルユタカの苗植え大作戦は幕を閉じることになります。

 

けれど私たちは実感しました。小麦の成長の難しいことや農家の皆さんのたくさんの苦労。苗立てをして手間をかけて育てても、二俵分120キロの増加にしかならないのでは、コストに見合う売り上げにはなりません。作り手と技術者と粉屋。立場の違う者たちが、目的を一つに定めて取り組んだプロジェクト。達成に至らずとも、出会いと信頼と感謝という見事な穂を実らせたと私は信じています。