粉屋、畑を歩く2

皆さん、こんにちは

粉屋の安孫子です。

 

これまで何度もお伝えしましたが、収穫した小麦は一度国に納められ、その先の私たちへは売却統制があります。ですので、私たち製粉会社が購入できる数量というのが年度によって決められています。全体の収量が少なければ、自ずと仕入れる量も限られ充分に手に入れることができません。「農家の皆さんにハルユタカを作ってもおう!」。私たちはその一心で、会社を飛び出し小麦農家を訪ねて歩きました。

 

きっと農家には、農家の苦労と課題があります。その一つ一つをヒアリングし、ハルユタカを育てるためのコツを見いださなくてはなりません。育種研究家の小関先生が生みだしてくれた、ハルユタカ。偶然の産物であっても、一粒の麦に命が宿っています。しかも、その美味しさをハルユタカが自ら実証し、日本中のパンを愛する人から求められているのです。私たちが動かずして、この個性的なハルユタカの未来は続かない!

最初のうちは、みな怪訝な顔をして私たちを迎えていました。「なんで粉屋が農家なんかに?」。今まで製粉業者が小麦を見に来ることや、まして新しい品種のPRをするなど聞いたことがなかったからです。けれど熱心に質問を重ね、ハルユタカの魅力を語り、消費者の声を代弁する「粉屋」のしつこさに(笑)、首をかしげられながらも私たちは迎え入れてもらいました。それからは毎週のように車を出し、ポット栽培の達人 髙木さんを迎えに行って、いろんな農地を目指す日々。帯広3カ所、江別近郊20カ所、秩父別や由仁にも足を伸ばしました。「まるで恋人に会いに行く気分だよ」。ハンドルを握る私の横で、八十歳を超えた髙木さんは、青年のような面持ちで笑っていました。

 

春まき小麦の3月末から5月連休までの北海道は、とにかく寒い。寒風が横切る畑に立つと、恋心さえも吹き飛びそうです。ここに3月から雪はねをしてハウスを作り、ポットに種を蒔いて苗を育てるのです。とても簡単なことではありません。作り手と技術者と粉屋と消費者。トレサビリティの原点とも言える事業のスタートではありましたが、自然との闘いは私たちにとっての最初のプロジェクトXでした。