第十二話 次期社長の重責

安孫子安雄亡き後、その後継者となったのは甥の御坊田善雄でした。穏やかで几帳面で実直。「やってみるか!」の安雄とは正反対のコツコツ型で寡黙な人物でした。善雄は安雄にとって、年の離れた弟のような存在。江別製粉設立時には善雄を呼び寄せ、安雄の傍らで会社を手伝わせていました。

 

もともと善雄は工業技術系が得意。札幌工業高校を卒業後は、当時の国鉄苗穂駅にあった工機部に所属し、機関車を造る仕事に3年ほど従事していたのです。江別製粉の機械のことは、ずっと善雄が面倒をみてきたと言って過言ではないでしょう。外交向きではない善雄は、工場を中心に取りまとめを任され、安雄の片腕となっていました。しかし、安雄がいなくなってしまった今、営業が苦手などと言ってはいられません。機械だけを見ていても売り上げにはつながらないのです。激化する販売競争のなかで、善雄は意を決し「特販課」を設置します。売り上げの確保と営業の強化です。

江別製粉二代目社長 御坊田善雄
江別製粉二代目社長 御坊田善雄

江別製粉 特別販売課。それは営業の特攻隊と呼ばれ、飛び込みセールスに始まり、電話帳をめくっては営業トークを重ねる販売専門のチームでした。「あの江別製粉が勝負に出た」。販路を広げるとなると、どうしても競合との摩擦が生まれます。周囲のライバル会社から嫌がられ、敬遠されるのは避けられません。「安雄社長は知恵袋。同業者と反目し合わず、仲良く共存する道をとってきた」。相手の懐に入って協調を旨としてきた安雄と、新社長となった善雄はどうしても比べられてしまいます。

 

「伯父さんのようには、できない…」。善雄にとって特販課の設置は、とても勇気のいる決断でした。けれど何とか努力が功を奏し、少しでもお客さまの幅を広げることができたのです。その結果を踏まえ、善雄は4年という短さで特販課を解散します。これ以上の無理な営業は差し控え、会社にとって必要な、次なることに打ち込むのでした。