皆さん、こんにちは。
粉屋の安孫子です。
今回は家庭用パンミックスについてのお話をいたしましょう。家庭でパンが焼けたなら…。そんな思いはずっと持っていました。小麦粉が売れることはもちろん嬉しいのですが、もっともっと一般家庭で親しみをもってもらいたい。その気持ちがあったのです。時代は昭和の後半に差しかかり、家庭の朝の風景にパンが並ぶ機会が多くなってきたころ。江別製粉営業部のオジサン四銃士の試行錯誤は始まりました。本来なら私たちは、メーカーや問屋さんに粉を卸していればよいだけの粉屋です。それがなぜかパンミックスに挑戦し、大の男が頭を寄せあい、明けても暮れてもパン、パン、パン。今思えば、ちょっと面白い光景だったかもしれません。
さて、この話は昭和51年にさかのぼります。すでに私たちは本格的な家庭用プレミックス粉(おやつイン・クッキングミックス)と、強力粉と薄力粉のパンダシリーズを発売。主婦まかせだった菓子やパンづくりにひと役買おうと、新商品を登場させていました。それが思いのほか好調だったことから、パンへの情熱に火がついたのです。西脇信治、鷹觜(たかはし)昭三、佐久間良博、そして安孫子建雄。私たち四人は、カナダ産小麦を使って生地をこね上げ、何度も何度もパンを焼きました。最適な粉の量は? 水は? 酵母は? 風味はどうだ? 仕上がりは? さまざまな条件を試し、たどり着いた答えが「粉は300g」ということでした。男性ならば500gでも大丈夫ですが、女性がこねるには生地が大きすぎます。かといって200gではパンにしたときの量が少なすぎ。それぞれの奥さんたちにも協力してもらい、おおむね300gだろう…という結論に達しました。
↑上段:鷹觜、佐久間 下段:西脇、安孫子
昭和61年、カナダ産小麦のパンミックスはこうして発売されました。いつの間にか、家庭用プレミックス粉の発売から10年が経過していたのです。しかし、ここで私たちに「奇跡」が起こります。なんとこの年、ナショナルから自動パン焼き器が発売されたのです。しかも、小麦粉の量は280g! 私たちが導き出した粉の量と大差ありません。天下のナショナルが出した答えと近いのですから、私たちの感覚もまんざらではなかったのでしょう。気をよくした私たちはパン焼き器を4台も購入し、これらの機械でもパンミックスが使えるか検証し、自動パン焼き器用としても発売することができました。
さて、家庭の主婦に直接買って貰うにはどうすれば良いのか…? 私たちはスーパーの店頭に並ぶ以外にも、一般家庭との直販業務も開始したのです。ここで我ら四銃士に更なる追い風が吹き始めました。NTTと日本通運の所長さんから耳よりな情報がもたらされたのです。それはフリーダイヤルと代引きのシステムでした。直販の問題点は問い合わせと支払いの方法。パンミックスを買うための申し込みに料金がかかったり、銀行振込や書留郵送で代金を支払っていては主婦の足が遠のいてしまいます。弊社負担のフリーダイヤルであれば遠慮なく問い合わせができ、配達時に支払えるのであれば出かけずに済みます。これほど便利な方法はありません。
昭和62年春、STVのテレビ番組内でパンミックスが紹介され3000件もの問い合わせが殺到。その対応に追われる私たちを知ってか知らずか、この年の秋、我が社に初めてハルユタカがやってきたのです。
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